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2019.05.21

不動産金融業界のキャリア~その変遷と未来(中)「優秀なプロパティマネジャーを育成」

【住宅新報 2019年(令和元年)5月21日号 第5面に掲載された弊社代表執筆記事を発行元の許可を得て転載しています】

アベノミクスで急成長

 12年に始まったアベノミクスにより不動産金融業界は大きな恩恵を受け劇的な成長を遂げると共に恒常的な人手不足に陥った。そもそも数の少ない若手の経験者を採用することが困難なため、業界全体が20代半ばから後半の業界未経験の若手をアベノミクス以降大量に採用した。プロパティマネジャー、ディベロッパー、不動産仲介出身者等が中心であった。

 不動産金融業界の労働人口動態で最も層が厚いのは黎明期に大量にこの業界に若手として流れ込んだ現在40代後半から50代の第一世代である。次にアベノミクス効果によるこの数年で不動産金融業界に入ってきた当時20代半ばから後半の若手が、今は20代後半から30代半ば過ぎあたりに割と厚めな層として存在している。私はこの若手層を不動産金融業界の第三世代と呼んでいる。

 その結果、現在不動産金融業界は恒常的に20代が少ないのは言うまでもないが、実は第二世代に入る30代後半の層が薄くなっている。この層は大学の卒年でいうと就職氷河期の終わりに近い02年から04年あたりではないかと思われ、どの業界でも新卒採用を絞り込んだ世代なのでそもそも候補者の母数が小さい。

PMは事業パートナー

 当初から不動産金融業界ではプロパティマネジメント(PM)会社からアセットマネジメント(AM)会社へのステップアップ的な転職が多くみられ、今なおその傾向は変わらない。逆にいうとPM会社はAM会社の草刈り場と化しているような状況が続いている。PMのポジショニング・収益力を強化し、AMと比較しても魅力ある仕事にすることが急務であり、それにはAM会社の積極的な協力も必要なのではないかと考える。なぜなら、PM会社はAM会社にとってなくてはならない事業パートナーであり、優秀なプロパティマネジャーの育成こそがAM会社にとって今後更なる成長のための鍵となるからである。

 上場リート、私募リートのAM会社はその多くがスポンサー企業をもっており、それがAM会社および投資商品への信用補完となっている。

増える転職希望

 大手スポンサー系のAM会社は管理職・経営層をスポンサーからの出向者が担うケースが多い。プロパー入社した人材が30代後半以降に差し掛かるとポジションを求めて転職をするケースが増えており、各AM会社の悩みの種となっている。一方、AM会社とスポンサー企業との間にはファイアーウォールが敷かれており、スポンサー企業からAM会社へは出向ではなく転籍が望ましいという当局による指導もあり、AM会社のプロパー化が緩やかに進み、遠くない将来この問題は解消されていくのではないかと期待される。

 うめこうじ・まなぶ=89年九州大学法学部卒。住友建設(現三井住友建設)入社。法務、海外営業に従事。94年MBA取得。その後クリード、オランダ系再就職支援会社、人材会社などを経て06年に不動産金融・不動産ファンド業界に特化した転職エージェント、エムユーシーを設立。